普段、私達は、水晶体をぶ厚くしたり、薄くしたりしてピントを合わせています。30歳を過ぎると、徐々に水晶体が硬くなってきて、調節力が落ちてきます。40歳前後になると、「近くの細かい字が見にくい」「夕方になると見にくい、目が疲れる」「近業作業をしていて、急に遠くに視線をうつすと、ピントが合うまで時間がかかる」などの症状が出てきます。
この、加齢による調節機能の低下を老眼(老視)と言います。老眼は近視・遠視・乱視などの屈折異常ではなく老化現象ですから、誰にでも必ず起こってくる現象です。今までは、老眼になると「老化現象だから仕方がない。近用眼鏡を処方しましょう。」というスタンスでした。
2007年夏に多焦点眼内レンズ(遠近両用眼内レンズ)が厚生省に認可され、日本でも老眼治療を受けることができるようになりました。これは、眼科医療において20年に1度の画期的な進歩だと言われております。
これを受けて当院でも、多焦点眼内レンズによる老眼治療を開始いたしました。
単焦点眼内レンズは、ピントが合っている所は切れ味良く見えますが、それ以外の距離にはピントが合わないので、手元も遠くもくっきり見えるわけではありません。手術時に遠くにピントを合わせた場合には、手元を見る場合には近用眼鏡が必要になります。
多焦点眼内レンズは従来の眼内レンズと違い、遠距離・中間距離・近距離など複数の位置に焦点が合います。よって遠くの景色にも近くのメモにもピントが合うようになります。

現在、屈折型(眼内レンズが同心円状に近方ゾーンと遠方ゾーンに分かれており、それぞれに入射した光がその部位にピントを合わす)と回折型(入射した光がレンズについた溝によって回折現象を起こし、近方と遠方に振り分けられる)の2種類の多焦点眼内レンズがあり、年齢やライフスタイルによってレンズを選択することができます。
| 見え方の特徴 | |||
|---|---|---|---|
| 遠方 | 中間 | 近方 | |
| 屈折型 | ◎ | ○ | ○ |
| 回折型 | ○ | ○ | ◎ |
大ざっぱに言いますと、比較的若く活動的な方で、中間~遠方(50cm以上の遠さ)での視力を求められる方は屈折型。
新聞や読書など、近方視の見え方を優先させたい方は回折型ということになります。
当院では、手術前にしっかりと患者様の意向を聞き、院長自らが説明をし、納得していただいたうえで使用眼内レンズを選択いたします。
2010年1月より、当院が「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術(白内障に係るものに限る)」の「先進医療施設」として認定されました。
これにより、「先進医療にかかる費用(多焦点眼内レンズを用いた白内障手術)」として手術費・眼内レンズ費は全額自己負担となりますが、上記以外の手術前・手術後の診察・検査・薬代等の費用は保険診療で行えるようになりました。
手術費用は両眼で700,000円、手術前・手術後の診察・検査・薬代は保険診療となります。
近くと遠くの両方にピントを合わせることができるため、通常の生活で眼鏡を装用する可能性はほとんどありません。しかし、若い頃のようにどの距離でもくっきり見えるわけではなく、中間距離(50cm~1m)や、長時間読書をするときなどは眼鏡をかけた方が楽に感じる場合もあります。
多焦点眼内レンズを通した見え方に慣れる為の時間があり、手術直後から最良の視力が得られるとは限りません。人によっては半年くらいかかる方もおられます。
「像がくっきりみえない様な感じがする。」(コントラストの低下)と感じる場合はありますが、日常生活に支障をきたすことはありません。手術後の経過とともに、その症状は改善されていきます。
暗い所で強い光を眩しく感じる「グレア」や、光の周辺に輪がかかって見える「ハロー」という見え方が生じる場合があります。これもほとんどの場合、時間が経ち、見え方に慣れる事で気にならなくなります。
手術に伴うリスクはゼロではありません。通常の白内障手術に準じます。多焦点眼内レンズ挿入予定で手術を開始しても、広範囲の後嚢破損、チン小体断裂などにより、眼内レンズを挿入できない場合があります。(2007年の院長執刀成績では321例中0例です)。この場合は自由診療の契約を終了し、その後の治療については保険診療となります。
乱視が強い方、及び狙い屈折度数の誤差が生じた場合は、しばらく様子を見て、度数の補正の為の屈折矯正手術を追加で行うことがあります。
※その際、LASIKなどエキシマレーザーによる屈折矯正手術は必要な場合は、院長がバプテスト眼科クリニックで行います。エキシマレーザー手術代は別途必要となります。

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